
世界音痴 (小学館文庫)
穂村弘
講談社 / 2009-10
この本について
人と一緒にいるとき、ふと自分だけ浮いている気がする瞬間ってありますよね。会話に入れない、好意をどう受け取っていいかわからない、頼むべき場面で声が出ない。頭では「大したことじゃない」とわかっていても、体が固まってしまうあの感じ。私もよくあります。そういうとき、自分だけ世界の作法を知らずに立ち尽くしているような気になるんですよね。 穂村弘『世界音痴』は、その“立ち尽くし”の感覚を、隠さず、盛らず、淡々と観察している本です。読んで救われるというより、「あ、これ言葉になるんだ」と気持ちの居場所ができる感じに近いです。例えば、恋人の手を離してしまう場面のどうしようもなさとか、好意への反応が一気に無限大になってしまう癖とか、会話に入れず時間だけが沸騰していくあの焦りとか。自分でも説明できなかった細部が、突然すっと形を持つ瞬間があります。 もうひとつ、この本の効き方として大きいのは、「自分の反応が変でも、だからといって世界から落ちこぼれるわけじゃない」と静かに示してくれるところです。忘れ物エンジェルにはなれないとか、点滴を前に声が出ないとか、一般的な“自然さ”から外れていることに悩む気持ちがそのまま描かれていて、読んでいるうちに、自分の不器用さとの付き合い方が少しだけ和らぎます。 自分の感覚が他の人とずれている気がして、でもうまく説明できないまま大人になってしまった人に、そっと効く本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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