
太陽帆船
中村 森
KADOKAWA / 2024-03-14
この本について
人間関係の距離感とか、過去の出来事をどう扱えばいいのかとか、答えが出ないまま日々が進んでいくことってありますよね。忘れたと思っていたことが、ふとした拍子にまだ胸のどこかをつまんでくるような感じ。前に進みたい気持ちと、立ち止まっていたい気持ちが同居してしまうあの感じです。 『太陽帆船』は、その曖昧さをごまかさずに言葉にしてくれる本だと感じました。「直せた方が愛せたものも」とか「一度でも大切だった出来事は心を包む柔らかな皮膚」みたいな一行が、過去を切り離すんじゃなくて、抱えたまま生きていく方向をそっと指してくれるんです。また、「あなたにはガラスでいたい」という表現のように、自分の弱さや壊れやすさを否定しない視点もあって、強がるよりも正直でいる方が呼吸しやすくなる感覚があります。 そして個人的にいちばん響いたのは、「別れても会えなくなっても…一度出会えばずっと祝祭」というまなざしでした。人との関係を失敗や成功で判断しない視点が、肩の力を抜かせてくれるんですよね。誰かを大切に思った経験そのものが、自分の輪郭を作っているのかもしれない、と静かに気づかせてくれます。 関係の余韻を丁寧に扱いたい人に刺さる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
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