
デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社文庫)
河野啓
集英社 / 2023-01-20
この本について
目の前の仕事に必死になりながら、「頑張ってるはずなのに、なんだか空回りしてる気がする」と感じることがあります。あるいは、夢を語る人を前にしたとき、憧れと同時に妙な警戒心が出てくることもあります。強さって何なのか、努力ってどこまで信じていいのか、自分でも整理しきれないまま日々が流れていく感じです。 『デス・ゾーン』を読むと、そのモヤモヤが少しだけ形になります。読者が保存している抜粋を見ていて感じるのは、栗城史多という人物の「しつこさ」や「弱さ」や「虚勢」が、きれいごと抜きで描かれているところに皆惹かれているということです。DVDを延々と拭き続けるような執着や、泣きながら下山するような不格好さ、そして「夢」を語りつつどこか誇大広告めいた側面も抱えていたこと。その混ざり合いが、人間そのものなんだと思わせてくれます。 この本が効いてくるポイントは、まず「強さ=完璧さ」ではないと腑に落ちること。むしろ、土気色になるまで追い詰められたり、虚勢を張ったりする姿のほうがよほどリアルで、そこに自分の姿を重ねられます。そしてもう一つは、夢を語る人を前に覚える引け目や警戒心の正体が、著者自身の葛藤を通して言語化されていくところ。誰かを過剰に持ち上げたり切り捨てたりしなくていいんだ、と肩の力が少し抜けます。 「夢」という言葉にどこか距離を置いてしまう人に、静かに刺さる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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