
ごまかさないクラシック音楽(新潮選書)
岡田暁生 and 片山杜秀
新潮社 / 2023-05-25
この本について
仕事でも趣味でも、ひとつの物ごとを理解しようとすると「全体を知らなきゃいけないのか…」と気が重くなることがあります。自分もクラシック音楽を聴くたびに、歴史も思想も全部わかっていないと楽しめないような気がして、妙に距離ができていました。でもこの本は、その窮屈さをやさしく壊してくれました。 印象的だったのは、ロマン派の音楽を「三分間文化」と「三時間文化」の往復として語る視点です。ショパンとワーグナーを並べて語るなんて大胆に見えるのに、読み進めると、どちらも人の感情が揺れ続ける時代の産物だったという線でつながってくる。歴史の知識がなくても、いま自分が感じている落ち着かなさや、情報に振り回される感じと直結して理解できるんです。 さらに、ベートーヴェン的な「全体性」を追い求める態度が、資本主義の成長主義とも重なるという話も妙に腑に落ちました。常に成果を積み上げないといけない焦りの正体を、音楽史の側から言語化してくれるような読書体験でした。逆に、ペルトのように「近代未満」へ向かう作曲家の話は、がんばることに疲れた自分の耳が何を求めているのかを知る手がかりにもなりました。 クラシックを詳しく知らなくても、時代の空気や人間の悩みの変遷として読める本です。自分と世界との距離感がうまくつかめない人に静かに刺さる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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