
心的外傷と回復 増補新版
ジュディス・L・ハーマン, 中井久夫, and 阿部大樹
この本について
人の痛みに向き合うとき、どこまで踏み込んでいいのか分からなくなることがあります。自分のしんどさも、人のしんどさも、あまりに重いと「これは触れてはいけないものなんじゃないか」と感じてしまう。見て見ぬふりをしたい気持ちと、目をそらしたくない気持ちのあいだで揺れる人は多いと思います。 『心的外傷と回復』は、その揺れをごまかさずに扱ってくれる本です。過去の研究史や臨床の現場を丁寧に追いながら、心的外傷がなぜ「人が直視したくないテーマ」になりやすいのか、そしてその中で何が失われ、どう回復が起きていくのかをゆっくり示していきます。特に、無力化と孤立が核心にあるという指摘は、抽象論ではなく、具体的な人間関係の中でどんな困難が起きるのかを想像しやすい形で書かれています。 また、この本が強いのは、治療者を特別な存在として持ち上げないところです。信頼が最初からある前提が崩れている状況で、人と人がどう関係を結び直していくのか。そのプロセスを現実的な温度で描いてくれるので、読んでいて変に希望を押しつけられる感じがありません。むしろ、他者との関係の中でしか回復は起きないという、当たり前だけれど負荷の大きい事実を、自分の速度で受け取れるように整えてくれます。 自分や身近な人の「なぜこんな反応になってしまうのか」の背景を知りたい人、あるいはケアに関わる立場で迷っている人には、とくに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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