
本居宣長―「もののあはれ」と「日本」の発見―(新潮選書)
先崎彰容
新潮社 / 2024-05-22
この本について
人と接していると、つい「正しさ」で相手を測ってしまう瞬間がありませんか。善悪で判断したくないのに、気づくと白黒つけようとする自分がいる。しかも、それで余計に人間関係がぎこちなくなる。こういうモヤモヤって、理屈で処理しようとしてもなかなか解けないまま残ります。 この本を読んで感じたのは、宣長の「もののあはれ」って、単なる古典鑑賞の話じゃなくて、こうした息苦しさとの距離の取り方に近いということでした。人を善悪で裁く態度から離れて、まずは目の前の出来事に反応する自分の感情を受けとめること。その揺れを誰かと共有していいと認めること。宣長はそれを、古代の人びとの生活や源氏物語の世界に重ねながら、ゆっくり説明してくれます。読んでいると、「ああ、人間関係ってもっと複雑でいいんだ」と肩の力が抜けていく感覚がありました。 もうひとつ刺さったのは、「外国由来かどうか」という表面的な話ではなく、画一的な価値観に人が押し込められていくことへの違和感を、宣長が丁寧に描いているところです。恋愛や歌といった、日常の些細だけれども豊かな関わり方の中に、人が生きる呼吸のリズムみたいなものを見ていた。そこに救われる気持ちがありました。 正しさよりも、人の揺れ方を大事にしたい人。そんな人に静かに沁みる一冊だと思います。
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