
大阪 (河出文庫)
岸政彦 and 柴崎友香
この本について
日々暮らしている街との距離感がつかめなくなることってありませんか。今いる場所に馴染めているのか、過去の自分とうまく折り合えているのか、そのあたりがふと曖昧になる瞬間があると思います。僕もそうで、引っ越しや仕事の変化が続く時期は、自分がどこに立っているのかよくわからなくなることがあります。 『大阪』は、そういう「居場所の手触り」がわからないまま進んでいるときに効く本でした。街の歴史や地形の話も出てくるけれど、実際に刺さるのは、人の生活がどう積み重なって街になっていくのかという視点です。震災の日に届かなかった情報のことや、御堂筋線ができた背景、知らない誰かの高校時代の記憶…。どれも大げさなエピソードではないのに、自分の生活の輪郭を少しだけくっきりさせてくれます。また、「昔に戻りたいわけじゃないけれど、そのときの自分を否定しないでいられる」という感覚が静かに流れていて、過去との距離がうまく取れないときに安心できました。 街そのものではなく、人ひとりの暮らしが集まって街になるんだという視点が腑に落ちると、今いる場所にも少し呼吸できる余白が生まれます。こんな人に刺さると思います。自分の“地元感”がどこにも定まらないまま大人になった気がしている人。 読後、「ここで暮らしていいんだ」と思える小さな根っこが、ほんの少しだけ伸びました。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの35%が集中しています。
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