
富士山 (コルク)
平野啓一郎
PHP研究所 / 2014-06-27
この本について
人と関わる時って、「本当のところ、自分は何を覚えていて、どこまで勘違いしているんだろう」とふと立ち止まる瞬間がありますよね。恋愛でも仕事でも、あの日の判断が正しかったのか、別の選択肢を選んだ自分のほうが本物の自分なんじゃないか……みたいな、説明しづらい揺れが続くことがあると思います。 『富士山』は、そのモヤモヤを大げさに解決してくれるわけじゃないけれど、あの揺れ自体に形を与えてくれる小説でした。たとえば、マッチングアプリの出会いが「偶然を欠いた関係」として描かれる一方で、それでも人はそこに意味を見出そうとすること。あるいは、過去の記憶が勝手に改変されてしまう怖さと、そんな不確かな材料しか持っていないのに、僕らが「自分という人間」を組み立てているという事実。そのどれもが、自分の中にあった違和感と妙に重なるんです。 読んでいると、人生の選択や人間関係に「確実な答え」を求めなくてもいいのかもしれない、という気持ちが静かに生まれてきます。もしあの日、満席じゃなかったら別の未来だったかもしれない。そういう偶然と必然のあわいで生きている感覚を、丁寧に拾い上げてくれる物語でした。 記憶に振り回されがちな人、つい「正しい形の人生」を探したくなる人には、とても静かに響くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
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