
二つの祖国(三)(新潮文庫)
山崎 豊子
新潮社 / 2009-09-10
この本について
仕事でも人間関係でも、「どちらを選んでもしっくりこない」みたいな場面ってありますよね。自分の立場や価値観が揺れたまま、それでも日々の判断は止められない。頭では割り切れないのに、外側からは一つの答えを求められるあの感じ…。読んでいて、あの感覚にどこか似ていると思いました。 『二つの祖国(三)』の抜粋には、静かで重い揺らぎがずっと流れています。祖国と祖国の間に立つ賢治の視点や、裁判の裏でせめぎ合う国同士の力学。どちらが正しい、という話ではなく、板挟みの中で「人はどう存在できるのか」を見つめざるをえなくなる描き方が続きます。それが、読者の方が保存した部分にも表れていて、国家レベルの話が、いつの間にか自分の暮らしの迷いに重なるんですよね。 そして、ふるさとを口ずさむ場面や、池の水藻の描写のように、ささやかな情景が人の内面の奥にあるものをそっと引き出してくれる。大事件の只中にいるのに、心が向かうのは結局そこなんだよな、と思わされます。大きな社会の動きの中でも、自分の感情だけは勝手にうごく。そのズレをそのまま肯定してくれる感じがあります。 国や歴史を扱った作品ですが、「どっちを選んでも失うものがある状況で、どう気持ちを保つか」を考えたい人には、とても静かに効く一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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