
やまない雨はない妻の死、うつ病、それから… (文春文庫)
倉嶋 厚
文藝春秋 / 2004-02-10
この本について
人間関係で不用意な一言を言ってしまったり、昔の自分の未熟さを思い出してふと落ち込んだり……そんな瞬間って、大人になっても意外と減らない気がします。周りに合わせようとして本音を押し込めたり、自分でも気づかないうちに心がすり減っていたりして、「もう少しうまくやれたらいいのに」とぼんやり思うこと、僕もよくあります。 倉嶋厚さんの『やまない雨はない』は、そういうモヤモヤの延長線上にある痛みや、言葉にしづらい疲れに静かに寄り添ってくれる本でした。若い頃の不器用さや、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまった記憶を、作者自身が正面から語ってくれるので、自分の過去を否定しないで受け止めるための視点がひとつ増える感覚があります。また、世代として「価値観を抑圧してきた」という記述は、無理に強くあろうとして苦しくなるあの感じに名前をつけてもらったようで、読んでいて肩の力が少し抜けました。 この本の良いところは、悲しみや後悔のエピソードをただ重く語るのではなく、そこを通ってきた人だからこそ言える等身大の言葉が多いところです。過去の選択をやり直すことはできなくても、どう折り合いをつけながら次の一歩を踏むか。そのヒントが、派手ではないけれど日常に溶ける形で置いてあります。 過去の自分に小さな痛みを抱えている人に刺さる一冊だと思います。
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