
新世界より(上) (講談社文庫)
貴志祐介
講談社 / 2011-01-14
この本について
仕事でも人間関係でも、相手との距離感がつかめずに疲れてしまうことがあります。怒りたくないのに苛立ったり、相手の言葉を深読みして落ち込んだり、気まずさが連鎖していく感じは、誰でも経験があると思います。自分がなぜこんなふうに反応してしまうのか、そもそも人間同士ってどう折り合いをつけているのか……そんな疑問が頭の片隅にずっと残り続けることもあります。 『新世界より(上)』は、物語の体をとりながら、人と人が衝突する仕組みや、逆に争いを抑えるメカニズムを、不気味なくらいリアルに描いてきます。たとえば、ボノボの社会がなぜ争わないのかという話や、人間が「攻撃したくてもできない」ように進化したとしたらどうなるのかという仮説が、フィクションの中で具体的な行動として立ち上がってくる。読みながら、自分がふだん抱えている苛立ちや恐れの根っこが、意外と本能的なものかもしれないと感じられて、少し肩の力が抜けました。また、記憶が都合よく書き換わる描写は、過去のすれ違いを思い返すときの「自分も相手も絶対に正しくない」という感覚に妙に重なるんです。 人との距離にいつも迷ってしまう人や、衝突を避けたいのにうまくいかない人には、とくに刺さると思います。物語としても面白いのに、読み終わるころには、自分がなぜ他人に優しくできない日があるのか、逆になぜ必死で優しくしようとするのか、そのあたりの焦点が少しだけ合ってくる本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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