
小説の自由 (中公文庫)
保坂和志
この本について
書くことや読むことに向き合っていると、自分が何を見ているのかよく分からなくなる瞬間があります。うまく言語化できない感覚があるのに、文章として形にした途端に「分かったつもり」になってしまうあの感じです。思考の途中にいる自分をどう扱えばいいのか、ずっともやもやしている人は多いと思います。 保坂和志『小説の自由』は、そういう「言葉になる前の思考」をどう扱うかに妙に手触りがある本でした。たとえば、作者の意見を開陳するのではなく、視線や感覚の運動そのものを文字で立ち上げようとする姿勢。あるいは、人間の思考が原理と個別のあいだを往復していて、どちらか一方を切り離すと途端にリアリティを失うという指摘。こういう話は、小説を書かない人でも、自分の思考の癖に気づくきっかけになります。 もうひとつ効いたのは、「自由」とは無秩序ではなく、最大限力を発揮できる状態だという考え方です。書くことを工場労働のように効率化しなくてもいいし、無駄な時間ごと全部ひっくるめて創作の場になる。その視点をもらえるだけで、普段の仕事の思考にも少し余裕が生まれました。 小説を書く人だけでなく、「言葉にする前の自分の感覚を守りたい人」に刺さる本だと思います。
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多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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