
レヴィナス入門 (ちくま新書)
熊野純彦
この本について
仕事でも生活でも、自分がいま引き受けている「現在」がやけに重く感じるときがあります。頑張っているつもりなのに手応えがなくて、ただ世界のなかに放り込まれているだけのような感覚。抜粋にある「世界が私とはなんのかかわりもなく、たんに存在する」というフレーズに反応した人は、おそらくこの重さに心当たりがあるのだと思います。 『レヴィナス入門』は、その重さを軽くするというより、まず「その感じ方自体に筋が通っている」と示してくれる本です。たとえば、疲労がただの消耗ではなく「存在における一存在者の浮上」だと言われると、しんどさに意味を貼りつけるのではなく、いま自分がどんなふうに世界と接しているのかが少し見えるようになります。また、世界を異郷として感じる感覚がノスタルジーの裏側にあると説明されるあたりは、帰属できなさや居心地の悪さを抱えたままでも前に進める余地を教えてくれます。さらに「他者」は理解や包摂の対象ではなく、そもそも包括できないものとしての別の存在だという視点は、人間関係の詰まり方を別角度から捉え直させてくれます。 レヴィナスの哲学は難解と言われますが、この本はその思考が生まれる場面まで丁寧にたどるので、概念よりも「なぜそう考えるのか」が腑に落ちやすいです。自分の感覚がどこから来ているのか少しでも知りたい人には、ゆっくり効いてくる一冊だと思います。
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