
天平の甍(新潮文庫)
井上 靖
新潮社 / 1964-03-20
この本について
仕事でも人生でも、自分の決断が本当に正しいのか分からず、周りの温度感にも揺さぶられてしまう時ってあります。言葉では説明できないけれど、「ここまでしていいのか」「自分だけ空回りしていないか」というあの感じです。『天平の甍』を読んでいて思ったのは、普照や鑒真たちも、あの揺らぎと隣り合わせで動いていたんだということでした。 たとえば、普照が日本語への劣等感を抱えつつも議論の場に出ていく場面。正しさよりも「今この役を引き受けなきゃいけない」という気持ちが先に立ってしまう瞬間って、仕事でもありますよね。また、鑒真の沈黙や、真備の感動しない態度の中にある距離感を読む場面では、「相手の本心が分からないまま進むしかない」状況が丁寧に描かれています。自分の努力がどこまで届いているのか分からないあの孤独に、そっと寄り添ってくれる感じがありました。そして、一度の判断では到達できない長い時間軸――世間の熱が冷めるまで待つ二人の決意などを読むと、焦って結論を急ぐ自分の呼吸が少しだけ整います。 派手な励ましではなく、迷いながら動く人間の姿が静かに積み重ねられているので、「誰にも評価されない努力を続けていてしんどい人」に特に刺さると思います。読んでいて、自分の時間の進み方を取り戻せるような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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