
恋する西洋美術史 (光文社新書)
池上 英洋
この本について
仕事の疲れなのか、人間関係なのか、「なんでこんなに世界がギスギスして見えるんだろう」と思う日が続いていて、美術館に行っても作品そのものよりキャプションの知識にばかり気を取られてしまうことがあります。せっかくのアートが、ちょっと遠いものに感じるあの感覚です。 『恋する西洋美術史』を読んでいて思ったのは、作者が絵を“説明”しているというより、絵の奥にある人間くささを拾い上げてくれるところでした。ルノワールが黒を戻した理由とか、アリーヌを描く時だけ筆致が変わることとか、ゼウスが乱暴者なのに主神として扱われる理由とか。知識というより、「ああ、昔の人も迷いながら生きてたんだな」という感覚のほうが先に来るんです。また、マイ・フェア・レディやジューン・ブライドの話のように、身近な文化の裏にある価値観をさらっと示されると、自分のものの見方がいつの間にか“ひとつの型”に縛られていたことにも気づかされます。 絵の見方が劇的に上手くなる、という類の本ではなくて、むしろ日々の視界を少しやわらかくしてくれる本です。アートに自信がない人より、むしろ「知識はあるはずなのに、絵が自分の生活につながらない」と感じている人にこそ刺さる気がします。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの29%が集中しています。
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