
花神(上)(新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社 / 1976-09-01
この本について
日々仕事をしていると、「自分の判断がこれでいいのか」「もっと遠くまで見通せる目がほしい」と不安になることがあります。目の前の選択に追われていると、時間の流れそのものが縮んでしまうような感じもありますよね。そんなときに過去の人間を覗いてみると、意外と同じように迷い、焦り、矛盾を抱えていたんだなと気づかされます。 『花神』を読むとまず驚くのが、江戸から幕末へ向かう時代の、あの“病的なまでの危機意識”の濃さです。登場人物たちは、今の自分たちよりはるかに閉ざされた世界で、それでも「まずやることなのだ」と手を動かし、「見るものすべてが驚きだ」という田舎者の感受性を武器に、一歩ずつ進もうとしている。洪庵がコレラの惨状から医を志したくだりや、左内が密かに橋の下で施療を続けた場面に触れると、立派だからというより、ああ人間って矛盾を抱えながら動くしかないんだ、と妙に救われる感覚があります。 この本の効き目は、派手な名言ではなく、迷いながらも動く人の姿が淡々と描かれているところにあります。自分の判断に自信が持てないときでも、とりあえず手を動かすことでしか前に進めないこと。外の世界に出てみないと、驚きから生まれる跳躍は起こらないこと。そのどれもが遠い歴史の話なのに、妙に今の自分に近いんです。 歴史の中に、自分の迷いの“等身大”を見つけたい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
読書の順序
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