
帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫)
ティムール・ヴェルメシュ and 森内薫
河出書房新社 / 2016-04-22
この本について
仕事でも日常でも、誰かの発言を目にすると「これ、本当のところはどうなんだろう」とモヤモヤする瞬間がけっこうあります。情報はあふれているのに、自分の頭で判断できている気がしない。流れてくる言葉のどれもが薄くて、どこか他人の感想の寄せ集めみたいに感じることもあります。 この本を読んでいて刺さるのは、そのモヤモヤを思い切り皮肉として可視化してくれるところです。新聞を「目の見えない人間が話したことを耳の聞こえぬ人間が書きとめ…」と断じる場面は笑いながらも、ああ情報の伝達って実際こういうところあるよな、と妙に現実味があります。さらに、何かをきっかけに急に世界が鮮明に見える瞬間──ガラスケースのお菓子を前に雷に打たれたように起き上がるあの描写は、分かっていたつもりのことを急に別の角度から見直す感じに近いです。 そして何より、この物語は「おあつらえ向きすぎる状況」に気づいた主人公が、そこから外の世界を探り始めることで、私たち自身の思考停止を問い直してきます。過去の人物を現代に放り込むという極端な設定なのに、現実の社会への距離感が絶妙で、読後には、自分の見ている世界の前提を一度ひっくり返してみたくなるはずです。 社会の空気に「合わせてるだけかも」と感じる人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
読書の順序
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