
マスタードをお取りねがえますか。 (河出文庫)
西川治
河出書房新社 / 2014-02-04
この本について
仕事に追われていたり、毎日が同じことのくり返しに感じると、ふと「自分はどこで心を動かせばいいんだろう」とモヤッとすることがあります。食事すら流れ作業になって、味わっているつもりで何も感じていない瞬間があるというか。そんなときに『マスタードをお取りねがえますか。』を読むと、少しだけ感覚の目盛りが戻るような感覚がありました。 この本の特徴は、料理や食材を語りながら、いつのまにか人生の匂いや温度に触れているところです。たとえば、マスタードを娼婦になぞらえたり、ドライイーストの発酵を宇宙のざわめきとして聞き取ったり、単なる調理の描写にとどまらない。読んでいるこちらまで、普段なら見過ごしている匂いや音や質感を、もう一度手に取り直すような気分になります。さらに、うまいものだけを追うんじゃなく、まずいものを味わえた経験が自分の味覚を育てるという視点は、日常の失敗や停滞にも通じるものがあって、妙に救われました。 大それた気づきをくれる本ではないけれど、胃袋で考えるように、じわっと感覚の方から世界を思い出させてくれる。特に、「最近、何を食べても心が動かない」と感じている人には、ちょうどよく届くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの54%が集中しています。
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