
カー・オブ・ザ・デッド (Kindle Single)
乙一
Good Press / 2021-08-31
この本について
最近、ふとした拍子に昔の記憶がぶり返してくることってありませんか。もう整理したと思っていたのに、特定の人の名前や出来事に触れると一気に体温が下がるような感じになる。頭では「もう過ぎたことだ」と言い聞かせていても、心がついてこないあのズレに、僕もずっと悩んでいました。 乙一の「カー・オブ・ザ・デッド」は、そこをまっすぐ刺してきます。抜粋にもある「僕が悪いのだと、何度も自分に言い聞かせてきた」という感覚が、物語の中でじわりと形を持ちます。過去が地下に埋めたはずの場所から突然あらわれてくる感じや、生前の動作を繰り返す“彼ら”の姿が、まるで自分の中の未消化の記憶を見ているようなんです。 この作品が効くのは、過去とどう向き合えばいいのか、まだ答えが出ないまま立ち止まっているときです。逃げようとしても追いかけてくる記憶の重たさを、そのままの重さで描いてくれるので、「忘れろ」とか「切り替えろ」といった軽い言葉では届かない部分に、静かに手を置かれる感覚があります。それに、炎や爆発のシーンの描写が圧倒的で、状況の激しさと心の揺らぎがじんわり重なってくるのも印象的でした。 過去に疲れたまま歩いている人にこそ刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの29%が集中しています。
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