
空白を満たしなさい(上) (講談社文庫)
平野啓一郎
講談社 / 2015-11-13
この本について
最近、人との距離感とか、過去の出来事の重さをどう扱えばいいのか分からなくなる時があります。会わなくなった人を「まだどこかにいる」と思うのと「もういない」と受け取るのは、実は紙一重だったりして。自分の中でだけ時間が止まってしまったような、あの妙な空白にどう向き合えばいいのか、僕自身ずっと迷っていました。 『空白を満たしなさい(上)』は、主人公が“死んでいたはずの自分”に追いつこうとする物語なんですが、その過程で、自分でも説明しづらい感情の正体がふっと輪郭を持ちはじめます。生きている人間だけが変わっていき、死んだ人は同じ逸話の中で固定されてしまうという描写は、僕らがどれだけ「他人の記憶」の中で生きているのかを静かに突きつけてきます。また、「亡くなる」ではなく「無くなる」と捉えてみる祖母の姿には、死を恐怖ではなく“存在の薄まり”として受け取る別の視点があり、これは身近な人の老いを前にした時の戸惑いに、そっと言葉をあててくれました。さらに、主人公が自分の死を“他人によって語られた物語”として知る場面は、僕らが普段、どれだけ他人の言葉に自分の輪郭を委ねているかを思い知らされます。 誰かとの関係が止まったまま心に残っている人や、過去の自分と現在の自分が噛み合わない感覚を抱えている人には、特に静かに効いてくる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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