
父の生きる (光文社文庫)
伊藤 比呂美
光文社 / 2014-01
この本について
家族の介護や看取りの場面で、「正直しんどいのに、弱音を出す場所がない」と感じることってありますよね。相手を思うほど苛立ちも湧いてきて、そのたびに自分の小ささを突きつけられるようで、何に疲れているのかさえ分からなくなる。読者が保存していた抜粋を見ていると、まさにその“どうしようもない重さ”に共感しているんだろうなと思いました。 この本が効いてくるのは、まず「見守る側のしんどさにも、ちゃんと名前がある」と気づけるところです。人ひとりが死ぬのを見守るには、生きている人ひとり分の力がいる。そう言い切ってくれるだけで、無理して強く振る舞わなくてもいいんだと思える。また、老いによる振る舞いを“その人の本質”と混同しがちなとき、著者が父の奥にまだ残っている人間らしさを丁寧に探していく姿が、こちらの視点も少しだけ柔らかくしてくれます。 そして、虚無に引きずられそうになりながらも、十五分でも話してくれたらそれを「まだつながっている」と思える心の持ち方が、現実的で救いになる。介護や看取りに正解はないけれど、どう距離を取るか、どこで踏ん張るか、そのさじ加減が少しだけ見える本です。 誰かの“終わり”に寄り添おうとして疲れ切っている人に、静かに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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