
テミスの剣 (文春文庫)
中山七里
講談社 / 2014-10-25
この本について
仕事をしていると、自分が正しいと思って動いたはずなのに、組織の事情や世間の空気に触れた瞬間に途端に迷いが出ることがあります。最初の違和感はたしかにあったはずなのに、周りの論理を聞いているうちに自分の軸がどこにあったのか分からなくなる。正しさって何だっけ、と立ち止まるあの感じです。 『テミスの剣』を読むと、その迷いを「弱さ」ではなく「生きている証」として扱ってくれる感覚があります。登場人物たちは皆、正義を簡単に語らないし、組織や制度の歪みとも向き合わざるを得ません。その中で「最初に感じたことがその人にとっての真実」という言葉が何度も響きました。自分の倫理観が揺さぶられたとき、どこまで耳を澄ませればいいのか、この本はその距離感を少しだけ示してくれます。また、知識も観察力も足りないなら取りに行け、という姿勢が物語の随所にあって、迷いながらも前に進むための現実的な手触りがあります。 特に、誰かを裁く立場の苦しさや、人間が完全な公平さを持てない限界について描かれた部分は、仕事で判断を求められがちな人ほど刺さると思います。「自分の声に従いなさい」という言葉は甘やかしではなく、覚悟を伴う提案として響きました。 自分の正義が揺らいだときにどう立て直すかに悩んでいる人に、静かに効いてくる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの12%が集中しています。
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