
ネメシスの使者 (文春文庫)
中山七里
文藝春秋 / 2020-02-05
この本について
最近、正しさとか制度とか、人の「扱われ方」について考え込むことが多いんですよね。理屈では説明できても、現場の感情とはまったく噛み合わない瞬間があって、そこで妙な無力さが残る。特に犯罪や刑罰の話になると、正義を語る側の都合だけが前に出てしまう感じがして、割り切れないまま終わることが多いです。 『ネメシスの使者』を読んで刺さったのは、まさにその割り切れなさを真正面から扱っているところでした。たとえば「極悪人の集団に閉じ込めて矯正を期待するのは狂気」という一文。制度として成立していても、人としての感覚からするとどこか歪んでしまう構造を、作中の人物の迷いごと提示してくれるんです。また、遺族側と制度側の論理がどうして埋まらないのかも描かれていて、単に「理解し合いましょう」では済まされない距離があることを、変に綺麗ごとにしないのがありがたいところでした。組織が自分の体面を守るために人を駒として扱ってしまう描写も、仕事をしていると他人事とは思えないはずです。 正義とか罰とか、簡単な答えがないテーマに向き合いたい人には特に刺さると思います。読んでスカッとする話ではないけれど、自分が普段どんな基準で他人を判断しているのか、どこで思考停止しているのかに気づかされる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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