
忘れられた日本人 (岩波文庫)
宮本 常一
岩波書店 / 1995-02
この本について
日々、人と話していて「これはもう少し丁寧に向き合えたはずなのに」と後からモヤッとすることが多くて、どうしたら場をこじらせずに済むんだろうと考えることがあります。正しさで押し切るのも違うし、相手の気持ちばかり優先しても不自然になる。そんな行き場のない感覚に触れたあとで『忘れられた日本人』を読むと、少し肩の力が抜けました。 村の寄りあいで、理屈よりも体験を持ち寄り、いったん保留にして時間を置く。それでも顔を合わせつづけられるように決め方を工夫していた姿に、いまの私たちが忘れている“関係を壊さない知恵”を感じます。山道で歌をうたって互いの位置を知ろうとする場面も、効率ではなく「見えない不安を減らすためのやり方」が自然と積み上がっていたことに気づかせてくれます。時計のない生活の描写には、時間に追われない感覚がどんな思考を生むのかが静かににじんでいました。 この本は、昔は良かったと言いたいわけではなく、当時の人々がどうやって折り合いをつけ、生きるためにどんな方法を編み出していたのかをまっすぐ描いています。人間関係で消耗しがちな人や、正しさだけでは場が動かないことに薄々気づいている人に、そっと効いてくる本だと思います。
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