
心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門
原田隆之
金剛出版 / 2015-12-30
この本について
臨床の現場で「これって本当に効いているんだろうか…」と胸のどこかがざわつく瞬間、けっこうありますよね。自分なりに一生懸命やっているのに、根拠のある介入なのか、ただの“慣習”に乗っているだけなのか、判断できずに迷うこともあると思います。僕自身、「とりあえずこれをやっておけばいいんじゃないか」という発想に逃げてしまう時期が長くて、そのたびに後味の悪さが残っていました。 この本が助けになるのは、こういう曖昧な不安に対して、感情論でも精神論でもなく、現実的な視点の持ち替えをくれるところです。たとえば、スケアード・ストレートが“逆効果だった”と知らされた時の衝撃を通して、「事例の迫力」と「データとしての事実」はまったく別物だと腹落ちさせてくれます。また、東日本大震災でのデブリーフィングの失敗事例のように、善意だけでは人を助けられないことを具体的に示し、介入に伴う責任の重さを静かに突きつけてきます。さらに、「エビデンスがない」ことは「効果がない」と同じではない、という柔らかい視点もあって、数字だけの世界に引きずり込まれる感じがしないのも個人的には救いでした。 科学に忠誠を誓え、という話ではなく、迷った時に立ち戻る“足場”を持つための本だと思います。臨床での判断に自信が持てない、あるいは「根拠」と「実践」の距離感がつかめない人にはとくに刺さるはずです。
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