
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)
村上春樹
新潮社 / 2010-04-10
この本について
最近、期待しては落ち込み、がんばっても自分の位置がよく分からなくなることが続いていて、「なんでこんなに疲れるんだろう」と思うことがありました。自分の中で感情の線がぼやけて、何に怒っているのか、何を諦めたのかも曖昧になるあの感じです。 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読み返していると、そんな状態を無理に整理しようとしなくてもいいのかもしれないと思えてきます。期待が失望を生むという冷静な視点や、「本来こういうものなんだ」と受け入れる姿勢が、世界の不条理に押され気味のときの支えになる。逆に、自分に同情しすぎると悪い力が入り込んでくるという言葉には、疲れたときほど気をつけたい感情のクセがそのまま描かれていてハッとします。 そして何より、この物語では「自分の手で学んだことだけが助けになる」と繰り返し示されます。人から与えられた意味ではなく、街の揺らぎや静けさの中で自分が読み取ったものだけが芯になる。記憶が不確かでも、立ち位置が見えなくなっても、その感覚を頼りにしていいと言われているようでした。 日常のモヤモヤを言葉にできずにいる人にほど、静かにしみる一冊だと思います。
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