
演劇入門 生きることは演じること (集英社新書)
鴻上尚史
集英社 / 2021-06
この本について
人と関わるのがしんどいのに、完全にひとりでいるのも落ち着かない。誰かの本音を知りたいけれど、自分の本音は見せたくない。そういう揺れって、日常の中でどう折り合いをつければいいのか分からなくなる時があります。コミュニケーションの教科書を読んでも、肝心の“生身のやりとり”がこわいまま、ということもあると思います。 『演劇入門』は、演劇そのものの話をしながら、実は「人とどう向き合うか」をかなり丁寧に扱っている一冊でした。たとえば、社会の中で自分と違う人に出会った時、ちゃんと届く言葉とは何か。あるいは、相手の内面を完全には分からないまま、それでも関係をつくるとはどういうことか。本書は、それを舞台の具体的な構造から説明してくれます。曖昧さにどう耐えるか、生身の他者にどう距離を置くか、そういうモヤモヤが少し整理されていく感覚がありました。 もう一つ印象的なのは、「人は一回しか人生を生きられないけれど、他人を演じることで別の視点を持てる」という考え方です。自分のパターンから抜け出せない時、他人の人生を一瞬借りるという発想はけっこう効きます。演劇の話なのに、仕事でも家庭でも使える“自分の枠を広げる方法”として読めました。 生身のやりとりに疲れやすいけれど、他人との距離の取り方を諦めたくない人に刺さる本です。
読書インサイト
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