
死物語 上
西尾維新、VOFAN
講談社 / 2021-08-19
この本について
仕事でも日常でも、いろいろ積み上げてきたつもりなのに、ふとした瞬間に「結局ぜんぶ流れていくんじゃないか」とモヤモヤすることがあります。コロナ禍の頃の混乱を思い出すたびに、あの必死さや焦りでさえ今は少し遠くて、「あれは何だったんだろう」と立ち止まってしまうこともあると思います。 『死物語 上』の抜粋にある「烏有に帰した」という言い回しは、まさにその感覚を静かに突いてきます。西尾維新らしい軽さの裏に、状況が落ち着いたように見えても、人の不安や判断の揺れはどこかに残り続けるというリアルな視点があるんですよね。この作品は、派手な結論をくれるというより、消えていったと思っていた記憶や感情にもう一度光を当てて、「あれをどう受け取るか」を自分のペースで考えさせてくれます。 読んでいると、あの頃の自分の行動や焦りが、単なる失敗でも過剰反応でもなく、人として自然な揺らぎだったのかもしれない、と少し柔らかい見方ができるようになります。過去を整理したいというより、「整理しきれなかった部分も残していい」と許してくれる感じに近いです。 過ぎていった時間に意味を見つけたいけれど、まとめるほどの気力はない、そんな人に静かに刺さる一冊だと思います。
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