
ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと (中公新書)
村上靖彦
この本について
仕事でも家庭でも、人に関わる場面で「どう寄り添えばいいのか」が分からなくなることがあります。相手のつらさを想像しきれなかったり、自分の中の“ものさし”で測ってしまい、後からモヤッとすることもあると思います。僕も同じで、ケアにまつわる場面に立つたびに立ち止まってしまいます。 『ケアとは何か』は、その迷いに対して大きな声で答える本ではありません。ただ、「人はまず弱い存在として生まれる」という出発点から始まり、落ち着ける居場所とはどんな条件なのか、苦痛に敏感でいるとはどういう姿勢なのか、そもそも“その人らしさ”を支えるとは何か……といった視点を、実際の現場の語りとともに静かに示してくれます。読んでいて、こちらのものさしが少しゆるまり、相手の個別の願いが具体的に見えてくる感覚がありました。 印象的だったのは、虐待へと追い込まれた母親たちが、自分の身体感覚さえ曖昧になっていたこと。身体を取り戻すプロセスが、自分の歴史や言葉を取り戻すことにつながっていく描写に、ケアが“治す”とは別の地平で働いていることを教えられます。また、「悲しい?」と一言かけるだけで相手の世界が開かれる場面は、コミュニケーションの原点に立ち返らせてくれました。 自分の関わり方に悩む人や、“正しいケア”よりも“人として向き合う”ことを考えたい人にとても刺さる一冊です。
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