
客観性の落とし穴 (ちくまプリマー新書)
村上靖彦
筑摩書房 / 20230608
この本について
数字やラベルで人を語る空気に、どこかモヤモヤすることがありませんか。子どもの発達の話でも、仕事の評価でも、「客観的だから正しい」と言われると、それ以上言い返せない感じがして。でも本当にそれで大事な部分は守れているのか、ふと立ち止まりたくなる瞬間があります。 『客観性の落とし穴』は、その違和感を丁寧に言葉にしてくれる本でした。発達障害という名称が支えにもなる一方で、安易なラベルが分断を生むことがあること。統計や偏差値が「世界そのもの」のように扱われ、人の経験が数字に押しつぶされていくこと。そうした状況に対して、この本は「数字の外で起きていることをもう一度見よう」と促してくれます。特別な結論を押しつけるというより、経験の生々しさを回復するための視点をそっと差し出す感じです。 読んでいて強く感じたのは、弱い立場の人ほど数値化の世界に従順にならざるを得ないという指摘の重さでした。だからこそ、偶然に満ちた私たちの経験をどう語り直すかが問われる。この視点を持てるだけで、誰かを「平均」や「法則」で片づけそうになる瞬間に、足が止まるようになります。 数字に寄りかかりすぎる自分にちょっと疲れている人、または日常のもやもやをどう扱えばいいか迷っている人に刺さる本です。
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