
フーガはユーガ (実業之日本社文庫)
伊坂 幸太郎
実業之日本社
この本について
最近、「自分の人生って、どこかで閑話休題が入ってくれないかな」と思うことが多いです。状況が急に良くなる兆しもなく、周りと比べてしまっては落ち込む。そのくせ誰かに褒められると、真偽はどうあれ救われてしまう自分がいる。そういう揺れ方って、わりと誰でもやっている気がします。 『フーガはユーガ』を読んでいて刺さるのは、まさにそういう心の動きが、少しの嘘を土台にした物語の中で、妙にリアルに描かれているところでした。伊坂さんが語る「嘘は一個だけ」という縛りが効いていて、設定に頼りすぎないぶん、人のささやかな感情が浮き上がってくるんです。誰かに「すごーい」と言われて舞い上がる瞬間や、自分の境遇を他人より軽く見積もってしまう不思議な癖。そういう、説明しづらいけど確かにある心の癖に光が当たる感じがあります。 読み進めるうちに、「外れ扱いされてきた人生でも、せめて敢闘賞くらいはあってもいいよな」と思っている人物の視点が、自分の感覚と地続きに感じられてくるんですね。大きな成功とか逆転劇ではなく、どうにか今日をやり過ごしながら、それでも何かを期待してしまう。そんな人間のちいさな希望を、物語という形でそっと代弁してくれます。 日々の運の悪さにちょっと疲れている人や、「自分だけ外れ枠なんじゃないか」と密かに思ったことがある人に、特にしみる物語だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
読書の順序
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