
デッドライン(新潮文庫)
千葉雅也
新潮社 / 2019-11-27
この本について
仕事のことでも、人間関係でも、「自分って何者なんだろう」と急に足が止まる瞬間があると思います。役割とか属性で説明しきれない気持ちがあるのに、うまく言葉にできないまま日常だけが進んでいく。そんなモヤモヤを抱えたままでも生きていけるけれど、ふと空白が痛むようなあの感覚に、僕はずっと居心地の悪さがありました。 千葉雅也さんの『デッドライン』は、その空白に無理やり答えを当てはめるのではなく、「揺れたままの自分」をそのまま生きていいのだと示してくれる本です。思想と欲望、日常と哲学、過去の自分と今の自分が、切り分けられずにひとつの線上に並んでいく。その過程で、構造主義やポスト構造主義といった理論が、抽象ではなく“自分の感じ方を説明する道具”として急に手元に降りてくる瞬間があります。河川敷や二丁目の情景の描写は、ただの風景じゃなく、自分の中の揺れを外側に映し出したようで、読んでいて妙に腑に落ちました。 一番大きかったのは、「マジョリティの道徳のなかで無意識に縮こまっていた感覚」に気づけたことです。誰かの基準に合わせようとする癖がある人ほど、この本の視点の変化が静かに効いてくるはずです。「自分をどう定義するべきか」という問いそのものを少し横に置いてみたい人に、ひっそり刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
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