
精読 アレント『人間の条件』 (講談社選書メチエ)
牧野雅彦
講談社 / 2023-03-09
この本について
最近、技術や社会のスピードにむやみに巻き込まれて、自分が何をしているのか実感しづらいことってありませんか。慣れたはずの仕事のはずなのに、どこか自分の手応えが薄いまま毎日が進んでいく。僕もずっとこの違和感をうまく言葉にできませんでした。 牧野雅彦さんの『精読 アレント『人間の条件』』は、そのモヤモヤに「名前」を与えてくれる一冊でした。たとえば、科学や技術が高度になりすぎて、私たち自身が自分の生活の仕組みを理解できなくなっているという指摘。単なる現代批評じゃなくて、「なぜ自分が世界から少し距離を取ってしまうのか」と考えるための視点が静かに差し込まれます。また、ガリレオ以降の「世界からの疎外」や、社会が巨大な家計のようにふるまって個人を均質化していく流れも、今の職場で感じる息苦しさと重なりました。抽象的な哲学の話に見えて、生活の中の小さな窮屈さに向き合う手がかりになるのが意外でした。 派手な答えが見つかる本ではないけれど、自分の感覚を丁寧に回収したい人にはしっくりくると思います。特に、「なんとなく世界との距離が広がっている気がする」という感覚を抱えている人に刺さるはずです。僕自身、読み終えて少しだけ周囲の出来事の見え方が変わりました。
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