
精読 アレント『全体主義の起源』 (講談社選書メチエ)
牧野雅彦
講談社 / 2015-08-10
この本について
最近、ニュースを見ていて「なぜ社会はこんなに分断しやすいんだろう」とか、「空気がどんどん極端に寄っていく感じがする…」と落ち着かないことが増えてきました。自分の周りで起きていることを言語化できないままモヤモヤしてしまう、あの感じに近いと思います。 牧野さんの『精読 アレント『全体主義の起源』』は、そのモヤモヤに少し風を通してくれる本でした。全体主義を「体制」ではなく「運動」として捉える視点は、いま私たちが見ている分断の空気を歴史の中に位置づけてくれますし、無国籍者が奪われるのは権利ではなく「世界のどこにも居場所がない」という状況だという指摘は、コミュニティから切り離された個人がどれだけ脆くなるのかを痛感させてくれます。また、反ユダヤ主義や人種主義が単体で暴走するのではなく、既存の政治的不満と結びついたときに初めて深刻化するという説明は、現代のポピュリズムを見る目を少し冷静にしてくれました。 歴史の大きな話をしているようでいて、実際には「自分がいま見ている世界をどう受け止めるか」が問い直される本です。特に、社会の空気に理由のない不安を覚える人には強く刺さる気がします。
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