
円 劉慈欣短篇集 (ハヤカワ文庫SF)
劉 慈欣, 大森 望, 泊 功, and 齊藤 正高
早川書房 / 2023-03-07
この本について
仕事でも人生でも、「自分の選択はこれで良かったのか」と後ろを振り返りたくなるときがあります。やれることはやっているはずなのに、環境は思うように動かず、未来の見通しも立たない。そんな停滞の中にいると、視野そのものがどんどん狭くなっていく感じがします。 劉慈欣の短篇集『円』は、そういう行き詰まりのときに、視点を一段ずらしてくれる一冊でした。たとえば、貧困や閉塞に翻弄される人々の「死んだ眼」が描かれる場面は、環境が人の思考や希望をどれほど奪うかを突きつけてきます。一方で、恐れていた事態が現実になった瞬間に妙な落ち着きが訪れる描写や、人間がスーパーコンピュータ並みに計算をこなす物語の圧倒的スケールは、自分の悩みが置かれている位置を静かにずらしてくれる。現実と非現実を行ったり来たりしながら、「今の自分の枠組みそのものが固定されすぎていたのかも」と思わせてくれます。 SFと聞くと遠い世界の話に感じますが、この短篇集はむしろ、日常の悩みを別角度から照らしてくれる鏡のような存在でした。地に足をつけたまま、しかし世界のサイズだけ少し広げたい人に刺さると思います。
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