
走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA)
柴田 勝家
早川書房 / 2022-11-16
この本について
最近、現実と気持ちのズレみたいなものに疲れてしまうことが多いです。誰かの反応が本心なのか、ただの「役割」なのか分からなくなったり、自分の選んだ道に根拠が持てなかったり。死や記憶、信仰みたいな大きいテーマまでは考えていないつもりでも、ふとした瞬間に「本物って何だろう」と立ち止まってしまうことがあります。 『走馬灯のセトリは考えておいて』は、まさにその曖昧さの中にいる時に効いてきました。たとえば、ライフキャストの“偽物みたいな父親”に戸惑う娘の場面は、他人の優しさを素直に受け取れない気持ちをそのまま言語化したようで、妙に胸に残ります。あるいは「死んでしまうから、向き合うんです」という言葉は、避けがちな感情に正面から触れた時の温度を思い出させます。そして、仮想世界や宗教性原虫の奇抜な舞台設定は、現実の私たちが抱える「距離の測り方」の不器用さを逆にくっきり見せてくれます。 SFらしいスケールの話なのに、人と人のわずか数十センチの距離がどうにも埋まらない感じがずっと描かれていて、読後に自分の関係性をそっと見直したくなる本でした。奇抜な設定よりも、人の戸惑いや弱さに目がいく人にはとくに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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