
遠野物語 全訳注 (講談社学術文庫)
柳田國男 and 新谷尚紀
講談社 / 2023-08-10
この本について
最近、昔話や土地の風習をどう扱えばいいのか分からなくなることがあります。歴史の本を読んでも自分の生活に落ちてこなかったり、逆に説話はどこまでが事実なのか迷ったり。その宙ぶらりんな感覚を放置したままでは、地域や文化を理解したつもりになるだけだよな…という気持ちが自分にもずっとありました。 『遠野物語 全訳注』が面白いのは、怪談や不思議話をただ民話として並べているのではなく、実際の暮らしの中で起こった出来事として扱い、その背後にある「生活の意味」を拾い上げているところです。河童の顔色が赤い理由や、狼が害獣ではなかった背景、山人に対する恐れや差別がどう形づくられたのかなど、具体的なエピソードを通して、自分たちの社会の成り立ちがじわっとわかってきます。読んでいると、物語を楽しむというよりも、今の世界の見え方が少し変わる感じがあります。 文献中心の歴史に対して、この本は「目の前の暮らしに刻まれた事実」を拾い上げようとした最初期の試みで、その姿勢がすごく現実的です。なぜこの土地ではこう語られてきたのか、という問いに、きれいごとではない形で向き合っています。伝承をただロマンとして消費したくない人には特に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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