
ともぐい
河﨑秋子
新潮社 / 2023-11-20
この本について
仕事でも人間関係でも、自分がどこに立っているのか分からなくなる時があります。器用に割り切れず、かといって元いた場所にも戻れない。そんな宙ぶらりんの感覚って、放っておくとじわじわ体力を奪っていくんですよね。 『ともぐい』の熊爪も、まさにその中で揺れ続ける人物です。山で獣として生きてきたつもりが、人と関わるうちに「どちらにもなりきれない」自分に気づいてしまう。読者が保存している場面には、彼が居場所を失いながらも、それでも前に進むために歯を食いしばる瞬間がやたら多い。その不器用さが、自分の弱さを鏡みたいに照らしてきます。たとえば、陽子への苛立ちや迷いの奥で「温もりが欲しい」と気づく場面とか、死に損ねて生き損ねて「はんぱもんだ」と呟く場面。ああ、人ってこうやって揺れながら生きてるよな…と変に落ち着かされるんです。 この作品が効くのは、今の自分をきれいに説明できない人です。強さでも優しさでもなく、ただ「迷い続ける存在」としての人間を描いてくれるから、無理に答えを出さなくてもいいのだと少しだけ呼吸が楽になります。獣にも人間にもなりきれない熊爪が、それでも歩き続ける姿は、自分の不格好さをそのまま抱えて進む許可みたいなものをくれるはずです。 こんな人に刺さる: どこにも馴染めていない気がしている人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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