
方舟を燃やす
角田光代
新潮社 / 2024-02-29
この本について
日々生きていると、「自分はちゃんと判断できているのか」「信じているものは本当に正しいのか」と急に不安になる瞬間がありますよね。誰かの意見に流されているだけじゃないか、かといって自分の軸なんて曖昧で、結局“これでいい”と思い込んで進むしかない。あのどうしようもないモヤモヤに、私も何度も足を取られます。 『方舟を燃やす』を読んでいて強く感じたのは、そのモヤモヤを「なかったことにしない物語」だということでした。人は結局、信じたい現実を作りながら生きていること。正しさなんて簡単には選べないし、ときには選択肢すらなくて、ただ流されるように動いてしまうこと。物語の登場人物たちの揺れ方や迷い方が、こちらの胸の奥でずっと燻っている気持ちとやけに重なるんです。 特に刺さったのは、「自分が信じている“正しさ”の根っこに何があるのか」をそっと問い返してくるところです。母娘のすれ違いも、デマに惑う人々も、誰かを責めるより先に“そう信じるしかなかった心の流れ”が丁寧に描かれていて、読んでいるうちに少しだけ他人にも自分にも余白を持てるようになる感覚がありました。何が正しいかわからない世界で、それでも明日を選ぶしかない私たちの姿がそのまま照らされるような一冊です。 正しさや信じることに疲れている人、あるいは自分の迷いや弱さを抱えたままでも前に進みたいと思っている人に、静かに寄り添ってくれると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
読書の順序
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