
八日目の蝉 (中公文庫)
角田光代
Bright Sparks / 2007-03
この本について
人間関係でも家族でも、「正しさ」と「気持ち」がうまく並ばない場面ってありますよね。頭ではわかっているのに、心が全然ついてこない。忘れたいことほど忘れられないし、思い出したくない過去ほど、ふいに生活の隙間から顔を出してくる。そんなとき、自分の感情の扱い方がわからなくなることがあります。 『八日目の蝉』を読むと、そのどうしようもなさに少しだけ輪郭がつきます。登場人物たちは、何かを成し遂げようとしているわけじゃなく、ただ「逃げなくては」と思った瞬間の感情のまま動いてしまう。やさしい環境にいるからやさしくなれるわけでもないし、知らないことを知ってしまうと戻れないこともある。そういう現実的な揺れを、そのままの温度で描いてくれるので、自分の中の説明しづらい部分にそっと光が当たります。 特に「自分が悪くないときは謝らなくてもいい」という言葉や、エンジェルホームの女性たちの孤独に触れる場面は、他人の選択を一度突き放してから、もう一度受け止め直す感覚に近いと思いました。理屈ではなく、行動の背景にある気持ちを追っていくので、読みながら自分の過去の判断にもゆっくり向き合えます。 家族との距離感に悩んでいる人や、「正しさ」より先に感情が動いてしまってしんどい人には、静かに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの97%が集中しています。
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