
「風の谷」という希望――残すに値する未来をつくる
安宅和人
この本について
都市にいても地方にいても、「このままの延長線上で生きていけるんだろうか」とふと不安になることがあります。便利さと引き換えに何かをすり減らしている気もするし、かといって自然のそばで暮らす未来が現実味を帯びて想像できるわけでもない。その中途半端な宙ぶらりんが、僕自身ずっと抜けませんでした。 この本の面白いところは、「自然か都市か」という二者択一を前提にしないところです。自然と共生しつつも経済性やレジリエンスを同時に満たす“第三の空間”をどう描いていくか。そのために必要なのが、土地の文脈を読み解く視点や、系として社会を見る思考のクセ、そして正解のない問いに向き合う姿勢だと語られます。特に、未来像が初めから定まっていない状態で方向性を決めていくプロセスの話は、自分の仕事の判断にそのまま持ち帰れる内容ばかりでした。 そしてもう一つ刺さったのは、「未来の谷は、すでにあなたの中に始まっている」という一文です。大きな構想や理想を語りつつも、それを遠い場所の話として扱わない。自分の暮らしや働き方の中で、何を選び、どこに違和感を持つかという“感度”そのものが未来づくりの一部なんだと自然に腑に落ちます。 環境のことも地方のことも気になりつつ、都市の便利さも捨てられない。そんな揺れのなかで「どんな未来なら自分も生きていけるのか」を考えたい人に、静かに効く一冊です。
読書インサイト
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