
この本について
大人になってくると、昔みたいに「なんで世界はこうなってるんだろう」とか「自分って本当に“いる”のかな」みたいな疑問を、ほとんど思い出すことすらなくなりますよね。忙しいとか、役に立つかどうかとか、そういう基準で物事を考えるクセがついてしまって、いつのまにか自分の内側で自然に湧いていた問いがしぼんでいく感じがあります。 『完成版〈子ども〉のための哲学』は、その失われかけた感覚を、少しだけ取り戻させてくれる本でした。永井均が語る〈子ども〉の哲学は、大げさな人生論ではなく、“ただ本当に知りたいから問う”というあの素朴さに戻ること。そのうえで、「独我論って実はこういう勘違いから始まっていた」とか、「善い・悪いって、好悪の感覚とどう絡み合っているのか」とか、自分でもずっと気になっていたのに言葉にできていなかったズレを丁寧に扱ってくれます。役に立たないからこそ意味がある、という哲学の姿勢も、変に気負わず読めました。 とくに、問い続ける人は大人になっても〈子ども〉だ、という話はかなり刺さりました。結局のところ、この本は“考えすぎて疲れている人”よりも、“そもそも考えることを置き去りにしてきてしまった気がする人”に刺さると思います。自分だけの問いを手放したくない人には、静かに、でも確実に効く一冊です。
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