
善悪は実在するか アフォーダンスの倫理学 (講談社選書メチエ)
河野哲也
講談社 / 2007-10-10
この本について
人と話していて、「価値観なんて人それぞれだし」で会話がそこで止まってしまう瞬間、けっこうありませんか。頭ではそうなんだけど、どこかで「それだけで片づけていいのかな」と引っかかる。自分の感じている違和感や大事にしたいものが、ただの主観として押し戻されるあの感じです。 この本は、そのモヤモヤを言語化しながら、少し別の見方を差し出してくれます。著者が言うのは、価値や意味は心の中のイメージではなく、環境との関わりの中で実在している、という考え方です。だから「私の気のせい」で片づけられがちな個別の感覚や応答が、実はきちんと世界に根を持っている。ここを押さえるだけで、普段の人間関係の中で感じていた窮屈さが、少しゆるむ感覚がありました。また、私たちがつい寄りかかりがちな「一般論」や「正しさ」を一度横に置いて、目の前の個別の状況にどう応答できるかという視点を取り戻すことにもつながります。 「相手の言っていることはわかるけど、一般論ではこぼれ落ちる現実があるんだよな」と感じた経験がある人には、かなり刺さると思います。価値や道徳を大きく説明する本というより、むしろ、人との関わり方を少し実在的に捉え直すための視点をくれる一冊でした。
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