
稲盛和夫 最後の闘い (日本経済新聞出版)
大西康之
この本について
仕事で数字を追うとき、「結局みんな感覚で動いてないか?」みたいな虚しさを感じることがあります。数字はあるのに使われていない、理念はあるのに届いていない、部門はあるのに当事者意識が育たない。自分も同じモヤモヤを抱えてきました。 『稲盛和夫 最後の闘い』を読むと、その停滞の正体が少しだけ輪郭を持つんです。たとえば「暴れる数字などない」という一言。数字が勝手に悪さをするんじゃなく、理由を追い切れていないだけだ、というあの感覚。あるいは「予算」という言葉を消して、現場が毎月の収支を自分で見に行くようにした話。情報を隠さず、部下任せにせず、自分で決めて自分で動く姿を見せる。それだけのことが組織の温度を変えていく過程が、淡々と書かれています。 読むほどに、仕組みより“心の向き”をどう整えるかが中心にあるのだと分かります。理念が薄くなると会社は迷走する。でも理念だけ掲げても人は動かない。数字を見える化して、理由を突き止めて、自分の仕事に引き寄せて考える習慣をつくる。その積み重ねが、気合ではなく現実的な再生につながっていく。 組織の「当事者」が育たないことに悩んでいる人には、とても静かに刺さる本だと思います。
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