
悲しみのイレーヌ (文春文庫)
ピエール・ルメートル and 橘明美
文藝春秋 / 2015-10-10
この本について
人間関係でも仕事でも、一度ズレたレールに乗ってしまうと、元に戻すタイミングが見えなくなることがあります。こちらは丁寧に話しているつもりでも、相手は別の意味で受け取っていたり、気づいたら「どうにかするしかない」みたいな、曖昧で荒っぽい言葉に追い込まれていたり。そんな時、少し距離を置いて自分の立っている場所を見直したくなるんですよね。 『悲しみのイレーヌ』は、まさにその「自分でも知らないうちに動いてしまっている心のクセ」を見せつけられるような物語でした。カミーユの中にある妙なタイマーの描写は、人との距離感をうまく調整できない時の落ち着かなさをそのまま形にしたようで、妙に胸に残ります。人は理性的に判断しているようで、実はもっと曖昧な力に動かされているのかもしれない、という視点をもらえました。 さらに、作中で繰り返し語られる「鍵になるのはどうやってではなく、なぜ」という言葉は、事件捜査だけでなく、日常で行き詰まった時にも効く感覚です。やり方ばかり探して空回りしていたのに、そもそもの理由を見直すことで状況がほどけていくあの感じに、思い当たる人は多いはずです。古典ミステリへの目配せも多くて、本そのものを読む楽しさも思い出させてくれます。 感情の動きに敏い人、そして「自分の中の理由」を確かめながら進みたい人に向いている一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの14%が集中しています。
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