
スキャナーに生きがいはない 人類補完機構全短篇 (ハヤカワ文庫SF)
コードウェイナー スミス、伊藤 典夫、浅倉 久志
この本について
仕事でも人間関係でも、判断の重さに疲れて「正しいって何なんだろう」と立ち止まるときがあります。自分の選択が誰かを傷つけていないか、それでも決めなきゃいけないのか……そんなモヤモヤを抱えたまま日々を進めていると、ふと視野が狭くなっていることに気づけないんですよね。 『スキャナーに生きがいはない』を読んで感じたのは、人間の判断がどれだけ揺らぎ続けても、それでも人間が選ぶしかない場面があるという事実でした。補完機構が“コンピュータに任せない”と決めているのは、迷いそのものを人間らしさとして受け止めているからで、そこに妙な救いがある。痛みと責任がセットになった行動こそが、物語の中の人物たちを人間として保っている姿に見えました。また、誤りや弱さを切り捨てず、それごと物語の中心に組み込んでいくところが、この作品の静かな力です。 個人的には、正義や使命を語る前に「人は裏切りもするし、弱さもある」という前提がちゃんと置かれているところがありがたかった。英雄像ではなく、生身の選択に寄り添う物語です。極端な状況に置かれた人間がどう迷い、どう踏みとどまるのかを見たい人には特に刺さると思います。
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