
火花 (文春文庫)
又吉直樹
文藝春秋 / 2017-02-10
この本について
人を前にすると急に自分が「どこにも属していない感じ」が出てきたり、周りはちゃんとやっているように見えるのに自分だけ遅れている気がしたり。そういう時って、想像力が暴走して自分を必要以上に追い詰めてしまうんですよね。『火花』を読んだ人が保存していた抜粋を見ていると、まさにその「自分が何者なのかわからなくなる瞬間」に心が動いているように感じました。 この小説が支えになるのは、派手な逆転や成功の話が出てくるからではなく、もっと地味で現実的な「踏みとどまり方」が描かれているからだと思います。例えば、舞台袖で呼吸の音ばかりがやけに大きく響く瞬間の描写は、自分の存在が揺らぐような場面でも人は意外と立っていられるという実感をくれるし、花火大会で誰にも振り向かれない漫才を続ける姿は、報われなさと、それでも続けることの奇妙な手触りを思い出させてくれる。さらに、神谷さんの「全員必要やってん」という不器用な優しさは、周りに追い抜かれたように感じても、自分がやってきたことが完全に無意味になるわけじゃないと教えてくれます。 何者にもなれていない気がする人ほど、この物語の温度が丁度いいはずです。すぐに励ましてくれるわけではないけれど、読み終える頃には「今は途中なんだ」という感覚だけはしっかり残っている。そんな本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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