
スペードの3 (講談社文庫)
朝井リョウ
講談社 / 2017-04-14
この本について
日々ちゃんとやっているつもりなのに、どこか「自動運転」で流されている感じが抜けないときがあります。誰かのために動いているつもりでも、気づけば自分の気持ちをごまかしていたり、逆に“謙虚であろうとしている自分”に疲れてしまったり。そういうズレに気づいた瞬間の、どう扱えばいいかわからない心の重さってありますよね。 『スペードの3』は、その重さを無理に軽くしようとはしません。むしろ、登場人物たちが抱える「自分でも説明できない揺れ」を、そのままの形で見せてきます。たとえば、誰かのためと言いながら実は自分のためだったと気づく場面や、物語を求められる世界の中で「理由なんてない」と立ち尽くす瞬間。あるいは、革命なんて起きないと知りながらも、それでも自分から動かないと何も変わらないと腹を決める静かな決意。読んでいて、自分がずっと胸の奥に置きっぱなしにしていた感情を手のひらに乗せられたような感覚になりました。 この物語は、状況を劇的に変えてくれるわけではありません。でも、自分がどんな前提で動いていたのか、どこで呼吸が浅くなっていたのか、そういう“見えづらいところ”をそっと照らしてくれます。自分のためによりよくなりたい、と思うことが本当にわがままなのか迷っているときに、少し背中が軽くなる本でした。 自分の正直さと折り合いをつけるのが苦手な人に、とても静かに刺さる作品だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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