
逃亡刑事
中山 七里
PHP研究所 / 2020-06-18
この本について
人を「味方か敵か」で雑に分けてしまいたくなる瞬間って、日常にもけっこうありますよね。職場でのあの人の態度に振り回されたり、誰かの一言で急に距離を置きたくなったり。でも、白黒つけようとするほど状況はややこしくなるし、自分の気持ちも疲れていく。そんなモヤモヤを抱えているときに『逃亡刑事』を読むと、少しだけ視界が広がる感覚がありました。 この物語には、暴力や理不尽が当たり前になってしまった環境に置かれた子どもが出てきます。そこで描かれるのは、単純な善悪で割り切れない人間の姿です。たとえば「人にはいくつもの顔があって、その都度変わっていく」というセリフ。これが物語の中では重たい現実と共に出てくるので、きれいごとではなく、状況にねじれたままの人間の複雑さとして響いてきます。誰かを断罪する代わりに、いったん立ち止まって考える余白が生まれる感じです。 そしてもう一つ、子どもが大人の理不尽にどう対処しているのかが丁寧に描かれていて、自分が忘れかけていた「怖さ」や「見て見ぬふりをしてしまう弱さ」にも気づかされます。正義感とか優しさを語る前に、人間の行動は環境によっていくらでも歪むという現実。その視点があるだけで、日常の苛立ちの扱い方が少し変わります。 人間関係を白黒つけすぎて苦しくなっている人に静かに刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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