
暗幕のゲルニカ(新潮文庫)
原田マハ
新潮社 / 2016-03-28
この本について
最近、世界のニュースを見るたびに、何に怒ればいいのか、どこまで関わればいいのか、自分でもわからなくなることがあります。無力感みたいなものがじわっと残って、でもそのまま流してしまうのもどこか落ち着かない。そんなときに『暗幕のゲルニカ』を読むと、感情だけでは片づけられない「ものを見る姿勢」みたいなものを静かに揺さぶられました。 この物語が効いてくるのは、戦争や暴力の話そのものよりも、「人はなぜ目を逸らすのか」というところに踏み込んでいるからだと思います。ピカソがゲルニカを描いた理由が、誰かを断罪するためではなく、“現実を直視させるための問い”として描かれていく。その姿勢が、いまを生きている自分にも突き刺さるんです。また、作品を巡る人々のエピソード──鳩の絵を託す場面や、国連に掛けられたタペストリーの背景──が、アートを歴史の中の「生きた選択」として感じさせてくれます。 読みながら思ったのは、これはアート小説というより、「どう向き合うか迷っている人」にそっと灯りを置いていく本だということ。正しい答えは示してくれないけれど、目を逸らさないでいるための支えにはなる。そんな温度感です。 世界の出来事に距離を取りたいのに、心がざわつく人にこそ刺さる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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